伊豆急下田駅前の土産物店「下田時計台フロント」(下田市東本郷)2階の広間「白龍亭」で10月22日、落語会「開国寄席」が開かれた。同施設で寄席が開かれるのは約半世紀ぶりで、会場には募集定員を上回る50人以上が集まった。
白龍亭の名前の由来となった、しっくいの2体の龍(関連画像16枚)
同施設では1961(昭和36)年の開業以降、広間を使って寄席やライブなどの催しが開かれていたが、近年は落語の開催が途絶えていた。一方、「開国寄席」は2019年の第80回黒船祭を機に始まり、下田旧町内の呉服店「喜久屋」を会場に市民落語家のお披露目の場としてスタート。その後、松崎町で休耕田を活用した稲作に取り組む落語立川流のはなし家との縁から活動の幅を広げ、昨年秋にはすし店「美松寿司(ずし)」の2階で「稲刈寄席」を開いた。今回は、出演者の一人で南伊豆落語研究会の杉山亮太さん(高座名=麺亭たいこ)が、かつて寄席が盛んだった同店代表の長池茂さんに会場使用を打診したことで実現した。
当日は、立川流の若手落語家・立川志ら門さんと立川かしめさん、南伊豆落語研究会の麺亭たらこさんと麺亭たいこさんが出演し、賢太郎さんとKAZUKIさんによるマジックも披露された。演目には、父子の温かいやり取りを描く「初天神」、長い名前が騒動を巻き起こす「寿限無(じゅげむ)」、身分違いの夫婦の会話がかみ合わない「たらちね」、息子の金銭感覚を試す「片棒」など古典落語の代表作が並び、観客席は大きな笑いに包まれた。着物での来場者に手ぬぐいを進呈する特典も用意され、会場には和装姿の観客も多く見られた。
会場となった広間「白龍亭」の名は、開業当時に左官職人が制作し、現在も梁(はり)の上に飾られているしっくいの2体の白い龍に由来する。専務の渡辺英典さんは「フロントは元々は『普論洞』の店名で、『普段から皆で集まって、たわいない話を論ずる場でありたい』という先代の思いが込められている。今夜の光景を、きっと先代も喜んでいるはず」と目を細めた。
主催した喜久屋呉服店店主の高橋弘樹さんは、冒頭のあいさつで、「数十年ぶりに再び下田の落語の歴史が動き出す、そんな夜になれば」と語り、「肩肘張らず気軽に楽しんでほしい」と呼びかけた。
市内から訪れた佐藤雅英さんは「学生時代から東京の新宿末廣亭に通っているが、何度も聴いている演目も新鮮で大笑いし、あっという間の2時間だった。終演後の街飲みも楽しみ」と話していた。
長池さんは「『普論洞』の名前の由来が息を吹き返す良い機会をいただき、関係者の皆さんに感謝している。今後も継続して開催できれば」と期待を込める。
同店では12月5日・6日、白龍亭を含む2階全体を活用した恒例の「手づくり市」を開く予定。