伊豆の海を舞台にした新たな教育プログラム「カリブの学港(がっこう)」の地域向け説明会が5月28日、下田市民文化会館(下田市四丁目)で開かれた。会場には地域住民や事業者など約200人が集まり、主要メンバーが語るこれまでの活動報告や伊豆の海の可能性などに真剣な表情で耳を傾けた。
自身の「推し魚」を紹介する岸壁幼魚採集家の鈴木香里武さん(関連画像5枚)
同プログラムは、身近な海の生き物や、海を究めてきた講師陣たちの生き様を通じて、子どもたちの好奇心や学ぶ力を育むことを目指すもの。決まった校舎を持たず、まち全体・地域全体を学びの場と捉えるのが特徴。臨海学校の減少といった社会的課題も見据え、オンライン授業で事前に知識と「わくわくを高めた」子どもたちが、週末などに下田を訪れてリアルな体験に挑む「2段階の学び」を導入している。
5月5日の正式立ち上げから約1カ月。「出航説明会」と題した今回のイベントでは、「港長(こうちょう)」を務める岸壁幼魚採集家の鈴木香里武さん、「海の手配師」として世界中の水族館に生物を届ける「港報(こうほう)」の石垣幸二さんが登壇。海の探究学習のフィールドで活躍する「舟長(せんちょう)」の森田太郎さんによるファシリテーションの下、これまでの活動報告や伊豆の海の可能性、今後の壮大な展望についてユーモアを交えて熱く語り合った。
鈴木さんと石垣さんは、それぞれの「推し魚」であるエボシダイやメンダコなどの幼少期の生態を紹介しながら、「足元の海にこそ、まだ見ぬ宝やドラマがたくさん眠っている」と、伊豆の海の豊かな生態系を紹介。特に「下田の海は多様な地形に恵まれていることに加え、海藻の種類が日本トップクラス。これだけ多様性に富んだ下田の海ほど、学びの場に最適な場所はない」と強調した。
鈴木さんは「下田には漁師、大学研究所や水族館の関係者、昔ながらの製法で塩作りに取り組む人や、下田名物の干物を作る人、市場で働く人など、海の先生がたくさんいる」ことも説明。「地域の皆さんにも、ぜひ先生になってほしい」と呼びかけた。
さらに説明会では、5月に実施したリアル体験プログラムの様子を動画と共に振り返った。下田ボートサービス周辺などで行われた岩壁幼魚採集では、親子で25種類もの幼魚を採集。子どもたちが自ら「ひれ」の筋を数えて種を調べる大学レベルの観察学習を行ったほか、下田で採集した幼魚を清水町の「幼魚水族館」の展示水槽へ実際に搬入し、来館者に届けるまでのストーリーを紹介。外浦海岸での水槽再現や、温泉宿「ならいの風」で料理人の指導を受けながら魚を自分たちでさばいて干物にするなど、命の循環を五感で学ぶ活動の実績を共有した。
併せて、6月に下田海中水族館とのコラボレーションによるアジの飼育・観察体験を計画しているほか、7~8月の夏合宿など、今後のカリキュラム構想も発表した。
鈴木さんは「海だけでなく、この地域の文化や歴史、産業を間に入れながら、下田だからできる学びを作っていきたい。海に関することに限らず、下田らしい体験ができる場所の紹介など、一緒にこの『学港』を盛り上げてほしい」と、地域一丸となった学校づくりへの協力を呼びかけた。