温泉旅館をリノベーションした和モダンな宿「おがわ旅館」(下田市武ガ浜)が7月2日、50周年を迎えた。
現在、宿を経営する坂部悠さんは下田生まれ、下田育ち。東京でアパレル関係の仕事をしていたが、2016(平成28)年に祖父、叔父に続く「おがわ旅館」3代目として、下田にUターンした。同宿は坂部さんの母の実家で、幼少の頃から親戚の集まりなどで慣れ親しんだ場所だったという。
宿を引き継いで以降、坂部さんは自身の豊富な海外旅行経験をヒントに、昔ながらの温泉旅館のたたずまいを少しずつ自らの手でアップデートさせていった。「祖父母が建てた旅館を再生するため、時代の流れと向き合いながら10年間かけて少しずつリノベーションを繰り返してきた。まだまだ課題はあるが、来る度に進化していく宿として皆さまに選んでいただけるところまで、ようやくたどり着いた」と坂部さんは振り返る。
全12室の客室は、温泉旅館だった頃の風合いを残しながらも、白と黒を基調とした和モダンな雰囲気となっている。和室洋室共に就寝時は布団を敷いて寝るスタイル。「下田の経済を活性化したい」という思いから、あえて食事は提供せず素泊まりのみとし、宿泊客には定休日なども考慮しながら近隣の飲食店を案内する。「見返りは求めず純粋にスタッフのお薦めの店を紹介している。年間数千人規模の宿泊客が街へ繰り出しているので、地域経済へそれなりの貢献ができているのでは」と手応えを明かす。
同宿ではコーヒーカルチャーの発信にも力を注ぐ。「海外では宿泊施設とハイクオリティーなカフェが一体となった場所が多く、おがわ旅館もそんな境界線のない空間にしたかった」という坂部さん。当初、宿泊客向けに提供していたコーヒーが口コミで評判を呼び、2017(平成29)年には宿の入り口横にあった小屋を改装してコーヒーショップ「THE BLACK SHIP COFFEE」をオープンした。
当初は宿泊客の出発に合わせた午前中のみの限定営業だったが、コーヒーをさらに究めたいと勉強を重ね、本格的なエスプレッソマシンの導入を機に店舗が手狭になったことから、2025年に敷地内へ新築した建物へとショップを移転。メニューや営業時間も大幅に刷新した。エスプレッソ(500円)やラテ(650円)、アフォガード(750円)などが並ぶ中、おすすめを尋ねると「どれも自信作で選べない」としながらも、「まずはアイスのドリップコーヒー(650円)を味わってほしい」と太鼓判を押す。
今後の展望について、坂部さんは「下田にはまだまだ無限のポテンシャルがある。自身の商売を大きくしていくことはもちろん、街に『これがあったらもっと面白い』と思うものを自分自身の手で具現化しながら、地域をさらに盛り上げていきたい」と前を向く。
宿泊料金は1泊6,000円~。「THE BLACK SHIP COFFEE」の営業は金曜~火曜=9時~16時(水曜・木曜は11時まで)。