松崎町と静岡大学、みんなのケア情報学会による3者連携協定の締結を記念した特別シンポジウム「松崎町の力を未来へつなぐ地域イノベーション」が7月12日、松崎町環境改善センター(松崎町宮内)で開かれた。
同シンポジウムは、人口減少や高齢化が進む地域の課題に対し、同町の自然や産業、人のつながりなどの地域資源と、大学の知見、企業の実装力を結び付ける地域共創の出発点として、みんなのケア情報学会の主催により企画されたもの。行政、大学、企業のほか、地域住民や学生ら約50人が参加した。
第1部では、3者連携の軸となるビジョンが提示された。同学会理事長の竹林洋一さんが、菌糸が地下でつながり森全体を支える「菌輪」の考え方を紹介し、多様な主体がつながる重要性を提起した。元慶応義塾長の安西祐一郎さんは「ふるさと感」と学びの意義について語り、地域への愛着が人を育み、地域の未来につながると呼びかけた。静岡大学の日詰一幸学長は、大学が教育や研究を通じて地域課題の解決に伴走する考えを示した。同大キノコ科学研究所所長の平井浩文さんは、キノコ科学やエコ農業を生かした研究と社会実装の展望を紹介した。
深澤準弥松崎町長は、町民と共有する町の設計図として「生老病死」の理念を掲げ、「生まれてから人生を終えるまで、この町で安心して暮らし、地域を愛してもらいたい」と説明。一方で人口減少や観光形態の変化に触れ、「まず町民自身が町に誇りを持つことが大切」と強調した。
第2部では、同町で展開する具体的な実践事例を紹介した。農業ベンチャー・栄農人の柳澤孝一さんと日野ひまわりさんは、観光イチゴやサクラヒラタケを活用した通年型の体験型農業について発表。高齢者や障害者も活躍できる地域産業づくりへの挑戦を語った。NeoRealXの安藤聖泰さんは、XRやデジタル技術を活用して地域資源を可視化し、観光体験の価値を高める取り組みを提案した。
伊豆松崎とんび農園の鈴木茂孝さんは、有機農業に加え、稲作塾やレモングラス事業、泥んこプロレスなど、人が集い交流する場づくりを紹介。「今日はいろいろな人が、いろいろな角度から話をしてくれた。でも一番大切なのは、町の皆さんが自分事として受け止めること」と呼びかけた。10月から地域活性化企業人制度を活用して同町で活動する静岡大学大学院生の島尾青空さんは「松崎町に入り、精いっぱい頑張りたい」と決意を語った。
第3部のパネルディスカッションでは、「松崎町で何を大切にしながら次の一歩を始めるか」をテーマに議論を展開。登壇者からは、それぞれの専門性を持ち寄りながら地域の未来をともにつくる重要性が語られた。会場からも金融機関関係者や地元高校生らが質問を寄せ、松崎高校2年の土屋洋斗さんは「キノコ栽培について深く知ることができ、やってみたいと思った」と感想を述べた。
最後のあいさつで深澤町長は、多様な人材や知恵を持ち寄る「集団脳」の考え方に触れ、「皆を幸せにするというのはおこがましいが、不幸にしないことはできると思う。覚悟を持って取り組みたい」と話した。さらに「人と人とのつながりが新しい価値を生み出す。今日という日は、この小さな町を舞台にした壮大な実証実験の出発点」と締めくくった。