下田高校生活科学部の生徒たちが11月4日、「ジビエ食堂」を風まち下田(下田市武ガ浜)で開き、多くの来場者が地元産のイノシシやシカを使った料理を楽しんだ。
「下田猪」のロゴをあしらったジビエ料理セット(関連画像10枚)
この取り組みは、静岡県内の中高生が地域の社会問題を解決しながら魅力を探るプログラム「アオハルし放題」(静岡銀行主催)の一環として行われたもので、9日に静岡市内で行われた公開コンテストで最優秀賞を受賞した。
きっかけは、高校近くの下大沢地区で害獣が増え、特に夜間に通学する定時制の生徒たちが危険にさらされていたことにある。同校の生活科学部は、この問題を地域特有の課題として解決しようと立ち上がり、最終的にはビジネスコンテスト出展を目指した。
「獣は山へ人は里へ」をコンセプトに掲げ、獣と人との共存を目指すとともに、耕作放棄地の管理など人間側の対策を探った。さらに、罠にかかった獣を食材として活用して個体数を減らそうと、イノシシ肉のライスバーガーセットとシカ肉のシチューを考案。ライスバーガーには同校南伊豆分校で栽培した野菜を使い、シチューには河津町特産のバラジャムを添えた。売り上げの一部は獣害対策費として積み立てる。ジビエ料理は農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」事業の一環で開かれるジビエ料理コンテストにも出展予定。
同部顧問の高橋朋子教諭は春から生徒たちを支え、イベント当日も共に調理を担当した。「1年生が課題探求を、2年生がジビエ料理を担当する。捕獲した命に感謝していただき、獣害問題を広く伝えられたら」と話す。
会場の風まち下田ではデジタルノマド招致イベントも同時開催しており、ジビエ料理を求めて訪れた市民やノマドたちの交流の場にもなった。普段から狩猟に携わる地元の猟師も来場し、高校生のジビエ料理を味わった。
飲食業と猟師を兼業する大村賢一郎さんは「ジビエは特別感や高級感があるが、もっと身近に感じてほしい。海と同じくらい里山の資源も大切。イノシシ肉は豚肉に劣らないおいしさ」と訴えた。
イベントの後半では高校生がプレゼンテーションを行った。大村さんと、共に狩猟に取り組む志田昇さんが「捕獲や解体に興味はあるか」と質問すると、生徒たちは「興味がある。引き続き総合的に取り組みたい」と答えた。大村さんは「狩猟免許や加工場の許可取得は大変。協力したい」と声をかけた。下田市産業振興課の獣害対策担当・鈴木琢磨さんもプレゼンを見守り、「耕作放棄地が害獣のすみかにならないよう対策が必要だと感じた」と述べた。