江戸城築城のために伊豆の山から切り出された大石を運ぶ「御石曳(おいしびき)」を再現して今に伝える「石曳(び)き道灌(どうかん)まつり」が9月29日、熱川海岸通り(東伊豆町奈良本)で開かれた。
約400年前、徳川幕府の命により行われた江戸城の改築では、東伊豆から海路で運ばれた多くの伊豆石が城の石垣や門に使われた。この歴史を今に伝えるものとして、伊豆稲取駅前の広場には約3トンの築城石が置かれ、築城石の歴史を紹介する看板も設置されている。1457年に江戸城を築城した太田道灌は、熱川温泉を発見した人物として逸話が残る。
同イベントは、山から切り出した大きな石を港まで運ぶ御石曳を再現し、約12トンの大きな石を動かすもの。1回で1メートルほどしか動かない巨大な築城石を、現地で募集した約250人が、侍大将のかけ声に合わせて50メートル先のゴールまで力を合わせて引いた。12回目となる今回は、イベント史上最速となる21分5秒で築城石を引き切り、ゴールに到達した際には「万歳」のかけ声とともに、参加者同士が健闘をたたえ合い笑顔を浮かべた。
4月から約800個の台湾ちょうちんが飾られている会場には、15店舗以上の夜店が出店。熱川バナナワニ園の「熱川ばにお」や熱川温泉のマスコット「どうかん先生」などのゆるキャラも駆け付け、太田道灌が狩りの時に打ち鳴らしたといわれる「熱川道灌太鼓」や地元有志バンド「ぎんでぇず」の演奏が祭りを盛り上げた。さらに石曳きが成功した後には、恒例の打ち上げ花火がクライマックスを飾った。
見物していた20代女性は「初めて来たが、非常に大きい石を実際に人力で引く光景に驚いた。特に印象に残ったのは石の上に座っている人も声がけをしていたところ。その場にいる一人一人が楽しみながら場を作っている一体感に感動した。来年はぜひ、石を引く役として参加したい」と話していた。
侍大将を務めた松本晃典さんは「2年目だったので勝手は分かっていたものの、非常に緊張した。アドリブで行うからこそ、司会とのかけ合いや参加してくれる皆さんの反応を見ながら、メリハリをつけられるよう努めた。このイベントを目的に訪れるお客さまが増えてきているので、全国に広まって熱川温泉の活性化につながれば」と期待を込める。