河津建設(下田市中)が4月17日、海底で熟成させた酒類を引き揚げ、市内の宿泊施設や飲食店、小売店などの依頼主に引き渡した。
今回引き上げた酒類は、同社が取り組む「下田海底セラーワイン」企画で預かり、下田港湾内の海底で約6カ月間貯蔵したもの。設置や引き揚げは、同社が所有する起重機船(クレーン船)で行う。酒類を持ち込めば、海底への設置や引き上げは無料。海洋工事に使われる設備を有効活用し、市内産業の振興を図る。
同企画の規模は年々大きくなっており、8回目を迎えた今年は下田市内の約30社が参加。昨年10月、ワインやウイスキーなど過去最多となる約1100本が海の底に沈められていた。
同社の河津元常務は「下田の美しい海を感じられる酒を下田で楽しんでほしい。酒に新たな価値を加えることで、地域の経済に貢献できたら」と話す。「海底で寝かせた酒はまろやかな味わいになる。酒類の中でも特に赤ワインの変化が顕著。詳しいメカニズムは解明されていないが、そこに海のロマンを感じる」とも。
当日は、同社の自社用ワインを用意した中伊豆ワイナリーシャトーT.S(伊豆市下白岩)のソムリエ吉田学さんがテイスティングも行い、「程よく熟成されている」と太鼓判を押した。
企画に参加した下田東急ホテルの担当者からは「5年前から毎年参加している。当館では海底熟成前後のワインを飲み比べる企画も好評で、お客さまに『こんなに味や香りが変わるのか』と喜ばれている」という声も聞かれた。
海底セラーで熟成させたワインは、市内のさまざまな宿泊施設や飲食店などで提供するほか、5月17日~19日に開催される「黒船祭」でも振る舞う予定。