南海トラフ巨大地震で大きな被害が出ることが想定される下田市で11月2日、住まいの耐震補強をテーマとしたシンポジウムが開かれた。会場は下田市民文化会館(下田市四丁目)小ホールで、市内外から約50人が参加した。
講師の名古屋工業大学大学院教授・井戸田秀樹さん(関連画像10枚)
同シンポジウムは、松木正一郎下田市長自らがコーディネーターとして企画したもの。かつて静岡県土木事務所の所長を務め、市長2期目の政策の筆頭にも防災を掲げる松木市長は「現在の伊豆半島は防災力、経済力ともに弱い。安全な観光地にするため手を尽くしたい」とあいさつした。
その後、名古屋工業大学大学院の井戸田秀樹教授が「耐震改修をビジネスにつなげるための課題と取り組み」と題した基調講演を行った。井戸田教授は1月に起きた能登半島地震で石川県珠洲市の建物が次々に倒壊する映像を流し、「住宅を強くしないと、生きていくことができない」と主張。県の木造住宅耐震補強プロジェクト「TOUKAI-0(東海/倒壊ゼロ)」による無料の耐震診断が本年度で、耐震補強工事に対する補助金も来年度で終了することに触れ、「それぞれが初期費用をかけて耐震診断を綿密に行うことで、結果的には改修費用を縮小できる可能性が高まる」と説明した。
さらに井戸田教授が提唱する「(耐震改修に関する)7つの鉄則」についても説明。耐震診断の精度を上げることで全体にかかる費用を下げることや、精密な診断を行うための事務手数料はきちんと予算に計上することなどをアドバイスした。行政のフォローにより耐震改修が飛躍的に進んだ高知県黒潮町の例を挙げ、行政が所有者と業者の双方をサポートしながら最適解に導くことが大切だと総括した。
その後は井戸田教授に加え、賀茂地域局副局長(兼賀茂危機管理監)山梨義之さんや地元の建築士2人をパネリストとしたディスカッションを展開。会場からも意見を募り、低コストでの耐震工法や有効な補助金の使い方に関する議論や質疑応答を行った。
下田市建設課長の平井孝一さんは「国は2035年を目処に耐震化100%を目指している。静岡県内の耐震化が9割近くまで進んでいるのに対し、下田市内ではまだ7割ほど。今後も引き続き目標値まで近づけていきたい」と結んだ。