創業90年の歴史を持つ老舗温泉旅館「今井荘」（静岡県河津町見高）が8月5日、運営会社の変更と約1年間のリノベーションを経て全館リニューアルオープンした。

10階客室からの眺め（関連画像5枚）

　同旅館は1934（昭和9）年の開業で、昭和天皇や上皇陛下の御臨泊をはじめ、皇室関係者や政財界の要人、文化人など、多くの著名人も利用した老舗旅館。伊豆急今井浜海岸駅から徒歩3分の場所にあり、水質の良い今井浜海水浴場が目の前という好立地に立つ。

　このほど、学校給食事業などを手がける東洋食品グループが買収し、2023年春からの約1年間かけて大幅なリノベーション工事を行いリニューアルオープンした。運営するのは同グループの「桜の森ホテル＆リゾーツ」。学校給食最大手というグループの強みを生かし、特に「食にこだわる旅館として再出発した」という。

　同館のコンセプトは「スローリゾート」。時間を気にせず食事や会話を楽しんでもらい、目の前に広がる海を眺めながらスローな時間を過ごしてもらいたいという思いを込める。

　滞在中の食事やドリンクの料金は全て宿泊代に含まれる。食事はビュッフェスタイルで、メイン料理は目の前で仕上げて、一品ずつ皿に盛り付けるライブキッチン方式で行う。キンメダイやアワビ、静岡牛などの素材の味を生かした料理を提供する。

　53室ある客室は全室63平方メートル以上のオーシャンビュー。基本プランとして「和室＋ベッドルーム」（1人2万4,000円～）や「和モダンツイン＋次の間」（同3万円～）などの宿泊プランを用意する。

　2つの温泉大浴場は露天風呂やサウナを備え、時間制で男湯と女湯が入れ替わる。併設するデッキは海に面しており、入浴後に海を眺めながら涼むことができる。貸し切り風呂も用意。庭には「潮彩テラス」としてソファが配置し、波音や潮風を直に感じながらくつろげるようにした。

　目の前の今井浜海岸の岩場でのシュノーケリング体験や、ダイビングスポット「菖蒲沢」での夜の水中生物観察会などのアクティビティーも別料金で用意する。

　荻久保瑞穂取締役は「ここにしかない観光資源が周辺には豊富にある。地元事業者と協力して活用していきたい」と話す。「今井荘は90年の歴史がある。伝統や格式など良いところは残しつつ、今の時代にあった新しいことを加えて、今後何世代にもわたって愛される歴史をさらに紡いでいきたい」と力を込める。