最古は1590年の資料も含まれる、伊豆半島のテングサ漁の歴史や漁民社会の構造を知ることができる古文書群「須崎区有文書」の展示と解説会が3月3日、須崎漁民会館(下田市須崎)で開催された。
マイクを手に解説する塚本教授(中央)=下田で古文書群の展示と解説
同文書群は1590年から1983年までの総点数2000点近くにも及ぶもので、普段は須崎漁民会館に保管されて非公開となっていたが、経年劣化や津波への備えが喫緊の課題となっていた。
海女の研究のために度々須崎を訪れていた東洋大学の研究員・齋藤典子さんが同文書の存在を知り、2021年に文書の保全と津波被害へ備えるためのプロジェクトを立ち上げた。齋藤さんの声がけに賛同した5人の研究員と共に、古文書のデジタル撮影や解読、目録の見直しなどを3年にわたりボランティアで行った。
この日展示された古文書は、異国船の乗組員と接する際の注意事項が書かれた「御請証文(下田開港後異国人遊歩につき)」や、明治中期のテングサ漁などの収支を記録した「天草勘定報告書」など16点。
今回の調査で発見された古文書の中には、隣町との間で起こった漁業権争い「明和の磯争い」の顛末(てんまつ)を記した「山海出入御裁許証文」もあり、「須崎の歴史を知る上で大変重要な資料」だという。
須崎でテングサ漁を行う女性は「区有文書があることは知っていたが、今回初めて実物を見た。このような場がなければ見ることはできなかった」と展示会の開催を喜ぶ。
古文書を解説した三重大学の塚本明教授は「須崎にはこのような素晴らしい資料がたくさん残っていることを、ぜひ地域の皆さんに知ってほしい」と呼びかける。
今後、「須崎区有文書」はデジタル化され、後世のため保管される。再整備された総目録1763点と写真約3万点は、須崎財産区協議会と市教育委員会に寄贈された。