南伊豆町のダイビングショップ4店が加盟する「神子元(みこもと)ダイビング組合」が5月25日、今年で13回目を迎える環境保全活動「神子元島水中クリーン作戦」を南伊豆沖の神子元島で開いた。
神子元島は周辺の複雑な地形と黒潮の影響で、多い時には数百匹のハンマーヘッドシャークが群れる姿を見ることができる世界的にも珍しいダイビングスポット。ハンマーヘッドシャーク以外にも、季節によってカンパチやワラサなど大型の回遊魚や、イサキ・アジ・タカベなどの群れが眼前を覆う風景も楽しむことができ、海外から訪れるダイバーも年々増えている。
この日は首都圏に住む常連ダイバーを中心に、全国各地から約150人が集結。海に潜って、釣り具や漂流物などの海洋ごみを集めた。波止場に戻ったダイバーたちには地元のジビエ肉を使ったカレーとみそ汁が振る舞われ、食事後にはイベントに協賛する伊豆漁業協同組合やダイビング用品メーカー各社の賞品を用意する抽選会も行われた。
「毎年この清掃活動に参加している」と話すのは、東京から訪れた常連ダイバーの手島恵美子さん。「潮の流れに乗ってサメを探すいつものドリフトダイビングと違って、今日のようにゆっくりと海底の地形や生物を眺めながらごみ探しをするのも楽しい。この清掃活動が終わればハイシーズンが始まるので待ち遠しい」と期待に胸を膨らませる。
ダイビング船「辰丸」船長の竹内照裕さんは「ダイバーたちが南伊豆の自然を守るためにわざわざ遠くから集まってくれてうれしい。ダイバーたちのボランティア意識の高まりを感じる」と話す。
黒潮の潮流はダイバーにはサメや大型回遊魚などを楽しむチャンスをもたらす一方、地元漁業への悪影響が懸念されている。「黒潮の大蛇行で南伊豆町近海の水温が上昇し、海藻が磯焼けして伊勢エビやアワビの漁獲量が減っている」と話す竹内さん。「海底の清掃活動は海藻の『海の森』の再生にもつながる大事な取り組み。海をきれいにすることはもちろん、植樹活動を通じて『山の森』を守ることも大切であることも知ってほしい」と思いを語る。