日本商業写真の開祖の一人である下田出身の偉人・下岡蓮杖の没後110年の命日に当たる3月3日、遺骨が分骨されている市内の「下岡蓮杖記念碑」(下田市三丁目)で手を合わせる人の姿が見られた。同日、染井霊園(東京都豊島区)での墓参会には下田から関係者が参加した。
下岡蓮杖は1823年に下田で生まれた画家・写真師。幼名は桜田久之助と言い、下田の「下」、実家のあった旧岡方村の「岡」、蓮を乾燥させて作った杖を常に手にしていたことから「蓮杖」と名乗り、雅号として使っていた。苦労を重ねて写真術を習得した末、1862年に日本人初の職業写真師として横浜市野毛に写場を開業。後に弁天通り、さらには馬車道にも写真館を開業し、多くの門人を育てて国内に写真術を広めた。
昨年150周年を迎えた下田小学校では、歌詞の2番冒頭に「愛の政長、技(ぎ)の蓮杖」のフレーズがある校歌が歌い継がれており、下岡蓮杖を下田の郷土愛を象徴する人物の一人として挙げる人も多い。
昨年から今年にかけて、下田では下岡蓮杖の生誕200年を祝うさまざまな催しが行われた。最も盛大だったのが、2月16日~18日に道の駅「開国下田みなと」(外ケ岡)で開かれた「下岡蓮杖生誕200年記念展」。蓮杖が手がけた写真や絵画の展示、下田小学校5年生による校歌の披露が行われ、3日間で500人以上が訪れた。
下岡蓮杖の伝承活動に取り組む「下岡蓮杖を顕彰する会」の土屋市次郎会長は「下田の偉人である蓮杖のことを、市民により深く知ってほしい。蓮杖を知ることで、下田の歴史と文化を改めて見直すきっかけにしてもらえたら」と呼びかける。
下岡蓮杖の生誕祭は毎年2月12日に横浜で、慰霊祭は毎年6月に下田で行われている。