海洋生物による二酸化炭素の吸収に注目し、筑波大学臨海実験センター(下田市鍋田)の和田茂樹助教を中心メンバーとする「Tara JAMBIO(タラジャンビオ)ブルーカーボンプロジェクト」が2023年12月20日、立ち上がった。現在、大規模調査実施のための資金をクラウドファンディングで募っている。
ブルーカーボンとは、海洋生物の活動によって海に閉じ込められた炭素のこと。海藻や海草などの海洋植物が、光合成により二酸化炭素を吸収すると有機物が作られる。その一部は海底の泥の中や深海に長い年月とどまるため、ブルーカーボンが増えることで大気中に放出される二酸化炭素が減らされるという。
同プロジェクトは「Tara Ocean Japan(タラオセアンジャパン)」と国内大学付属の臨海実験所をつなぐネットワーク組織「マリンバイオ共同推進機構(JAMBIO)」が連携した「Tara JAMBIO」が主体となり立ち上げられた。同組織は、日本全国の海洋調査や研究を行っており、日本各地で一般向けに研究内容や地球環境への啓発イベントを開いている。その他、調査に合わせてアーティストも参加し、作品を作るなど芸術的視点で、アーティストらが体感したことの発信も同時に行っている。
2020年~2023年には、シルバン・アゴスティーニ助教の指揮の下、日本全国のマイクロプラスチック調査を行い、2024年、新たに「ブルーカーボンプロジェクト」が始動する。同プロジェクトは「海洋生物が地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収する」というメカニズムを全国的に調査する国内初の試みで、世界的にも珍しい。今後の調査・研究で、日本全国の多様な海洋生態系が生み出すブルーカーボンの量やメカニズムが解明されると、地球温暖化の抑制効果も知ることができるという。
世界的にもブルーカーボンに関わる研究は未解明なことも多いが、伊豆半島の海でも磯焼けが深刻化しており、ブルーカーボンに及ぼす影響が懸念されている。和田さんは「下田に移住して14年になるが、ここ数年で伊豆の海の生き物が大きく変化している。この研究を通して、伊豆の海をはじめ地球全体の環境を守ることにつながっていけば」と話す。
同プロジェクト始動に先駆け現在、クラウドファンディングを実施。目標金額1,000万円を掲げ、集まった資金は調査研究費や研究に関わる旅費、啓発イベントなどの開催費に充てる。2月16日まで。