
終戦80年の節目となる今年、下田にも戦火が降り注いでいたことを伝えるため、「下田有線テレビ放送(SHK)」(静岡県下田市東本郷)が記念企画「しるす」に取り組んでいる。4月20日には、同企画による自主制作番組を初めて放送した。
同社は、四方を山と海に囲まれテレビ電波が一般家庭で受信しにくい下田市内の一般家庭などに向けて、地上デジタル放送を同時再放送しているほか、日々の取材を基にした地域ニュースなどの自主制作番組も手がけている。
今回の企画は、同社でカメラマンを務める淺田力さんの発案によるもの。2021年に下田市へ移住した淺田さんは、地域ニュースの取材で市内のさまざまな場所を訪れる中、多くの慰霊碑や鎮魂碑が残されていることに気付いた。調査を進める中で、下田市が終戦50年を機に編さんした体験記『海鳴り』に出合い、終戦間際の下田の町に何度も空襲があった事実を知ったという。
「移住者という立場ではあるが、この現実と体験を後世に伝えるべきだと感じた。テレビカメラを持つ自分だからこそ、体験者本人の声を映像で残せると考え企画を提案した」と淺田さんは振り返る。
記念企画「しるす」では、いくつかの自主制作番組の配信と、市内に残る戦争の爪痕を取り上げたニュースの発信を年間を通じて行う。1本目となる番組『昭和20年下田空襲 ~あの日、下田で何が起きていたのか~』は4月20日に放送。終戦当時に中学生だった3人の市民のインタビューを通じて、下田に降り注いだ空襲の生々しい様子や、終戦後の町の復興の様子を伝えた。番組は同日から5月11日まで、ユーチューブでも期間限定で公開している。
「今回の番組は、一から自分で企画・制作した初めての作品。当時の『女性は苦労を語ってはいけない』という空気の中で、これまで戦争について語ってこなかった方々からも話を聞くことができ、意義深い内容になった」と淺田さん。「自分より下の世代や子どもたちが、放送をきっかけに戦争に関心を持ち、戦争の事実を語り継ぐ存在になることで、さらに下の世代につないでもらえたら」と視聴を呼びかける。