東海汽船は11月18日・19日、東京と下田を結ぶ直行ジェット船の試験運航を行った。片道わずか2時間10分で到着する高速船には、2日間で延べ511人が乗船した。
この試験運航は、下田周辺の会社経営者や金融機関職員などが集まる有志団体「未来伊ZU CAMPUS(ミライズキャンパス)」が、地域活性化のために東海汽船に提案して実現したもの。
18日、東京発のジェット船は定刻通り8時50分に東京・竹芝を出発。レインボーブリッジや羽田空港などを過ぎて相模湾に入り、鎌倉、江の島と湘南エリアを抜けて伊豆半島へ向かった。船は熱海、伊豆大島、利島などの観光地を望みながら、時速80キロのスピードで颯爽と海を駆け抜けた。
船内では、海洋調査に取り組む「ウインディネットワーク」(下田市東本郷)が制作した伊豆半島の立体画像などを映し出した。座席の広さは飛行機のエコノミークラスと同程度だったが、大きな揺れはなかった。
11時の下田港到着時には、松木正一郎下田市長や下田商工会議所の田中豊会頭など、大勢の人たちが乗客を出迎えた。下田太鼓の演奏やご当地キャラの登場に加え、地元の水産加工会社「小木曽商店」による干物や、地元で複数の居酒屋などを展開する「開国」のあら汁の振る舞いなど、出迎えのセレモニーで盛り上げた。
高速ジェット船は同日13時50分の便で東京に戻り、翌19日も午前中に東京から下田を、午後に下田から東京を結ぶ便を、それぞれ運航した。
高速ジェット船の往復便を使って下田を初めて日帰りで回ったという80代女性と50代男性の親子は「体力的に不安だったが、問題なかった。船を降りてから、タクシーでペリーロードなどの観光地を巡り、干物を土産に買った。港近くの店で伊勢エビを食べたが、調理前の伊勢エビも見せてもらうなど、楽しい思い出ができた。港までは徒歩10分程度で、散歩も楽しめた」と声を弾ませた。
東京から下田への片道便を利用した40代男性は「ジェット船で下田に行き、南伊豆を回る予定。宿泊先は弓ヶ浜の宿で、浜がとてもきれいと聞いている。帰りは踊り子号(電車)を利用する」と話していた。
「今回の試験運航については、市内のあちこちでポスターを見かけた。メディアでも大きく取り上げられていたので、期待感があった」と話すのは海鮮料理店「磯料理 辻」(下田市三丁目)を営む渡邉順市さん。「ランチは予約制としているが、当日のお客さまの多くがジェット船の乗客だった。当日の問い合わせもあった。またジェット船を運航してほしい」と期待を込める。
未来伊ZU CAMPUS事務局を務める静岡銀行下田支店の山下永吉さんは「静岡県や下田市、観光協会などが日ごろ行っている地域活動と今回のジェット船というテーマが結びつき、地域一丸となって取り組むことができた」と手応えを話す。