速く走ると失格になるユニークなマラソン大会「みちくさぼちぼちフルマラソン」が11月17日、南伊豆町で初開催された。全国から約500人のランナーが集まり、観光とスポーツが融合したイベントを楽しんだ。
ぼちぼちマラソンのルールは、5時間以内の完走は失格、制限時間は9時間というもの。のんびりと町を楽しみながら走るスタイルが特徴で、タイムを競うのではなく「道草」を楽しむことが求められる。コースは約42キロにわたり、南伊豆町の観光名所を巡る。海岸線や温泉街など、地域の魅力を感じられるルートを設定した。
大会実行委員長の安藤広和さんは「昨年で10年間続けてきたウルトラマラソンが終了し、町のスポーツイベントがなくなってしまった。そこで、ウルトラマラソンとは正反対の、緩いマラソンを企画した。参加者には南伊豆の景色と食を楽しんでもらい、南伊豆のファンになってほしい」と開催の経緯を話す。
3カ所のエイドステーションを担当した地元のボランティア団体「あっそう会」の桑原かよのさんは「初めての試みで手探り状態だが楽しみ。ポタージュやフルーツポンチ、ゴール地点では豚汁やお汁粉を提供する。南伊豆の景色、食、そして地元の人々との交流を通じて、南伊豆を存分に楽しんでほしい」と話していた。各エイドステーションでは地元住民が応援し、特産品を振る舞うなど、ランナーは立ち止まって景色を楽しみながら大会を楽しむ姿が見られた。
大会運営を支援した「みちくさマラニック走援隊」代表の小野道章さんは「この大会は『楽しみを追求すること』がコンセプト。それに共感した全国のランナー500人以上が参加してくれた。ゴールする頃には体重が増えているぐらいエイドを楽しんで、記録やスピードではなく、風光明媚(めいび)な南伊豆町を大いに楽しんでほしい」と大会の魅力を語った。
1位でゴールした東京都江戸川区在住の林泰三さんは「1カ月後に那覇のウルトラマラソンが控えているので、練習として参加した。エイドではおにぎりと猪汁が印象的で、米がとてもおいしかった。景色も素晴らしく、特に海がきれいだった。夏には子どもを連れて、また訪れたい」と話した。
埼玉から初めてフルマラソンに挑戦し、無事に完走した大貫政江さんは「今年最大のイベントだったので、何としてもやり遂げたかった。今は達成感でいっぱい。地元の人々の温かさに感動し、皆さんに励まされたおかげでワープせずに完走できた」と充実した表情で語った。