2025年2月に予定されている「第2回イナトリ・アート・フェス」に向けたワークショップとして、建築家らと共に地区の路地や町並みの魅力を探るイベント「稲取の新しい道をつくろう!」が11月10日に開かれた。
主催は稲取地区を中心に空き家再生を手がける「so-an(そうあん)」。同アートフェス会場の一つで、郷土の偉人・西山五郎ゆかりの屋敷をリノベーションした宿泊施設「湊庵 路考茶(ろこうちゃ)」(稲取)の庭に新しい道を作るのに先立ち、「地域内外の力を借りて、稲取ならではの魅力が後世に残るような道を作りたい」と企画した。
同社代表の荒武優希さんは「古き良き稲取の町並みが少子高齢化の影響で徐々に失われつつあることに危機感を覚えた」と話す。
午前中は稲取の路地裏を歩くフィールドワークを行い、古民家の外壁や路地に面した石積みなどを観察。参加者は時折足を止め「隣り合っている家でも外壁の材質が違う」「伊豆石はどれだろう」などの気付きや疑問を語り合った。
稲取の鎮守神として信仰されている稲取八幡神社では宮司の稲岡孝宣さんから話を聞き、「なぜ稲取には家が密集して立てられているのか」などの身近な切り口から稲取の歴史を学んだ。
午後は東伊豆町役場の会議室で、日本建築学会賞やバルバラ・カポキン国際建築ビエンナーレなどを受賞した経験を持つ建築家・安部良さんを講師に招いてトークセッションを実施。地域と協働して進めるリノベーション事例や、近年の世界的な動向として自然を生かす事例などを紹介した。安部さんは「路考茶の新しい道作りが、稲取全体のまちづくりを考えるきっかけになるのでは」と呼びかけ、参加者は60分間にわたるトークに熱心に聞き入った。
最後は参加者を交えて活発な意見交換が行われ、「路地裏マップの作成」「道に名前を付ける」「あるもの探しワークショップを実施する」などのアイデアが次々と提案された。
地元出身で意見交換でも積極的に発言した高村由喜彦(ゆいひこ)さんは「運営するゲストハウスの外国人利用客から、稲取の風景が映画『崖の上のポニョ』に似ていると喜ばれることもある。稲取には地元民が気付いていない魅力があるのでは」と話した。
認定ジオガイドとして稲取細野高原などのガイドを行うso-anの新井翔さんは「今日学んだことを踏まえて町を歩いたら、より多くのアイデアが湧きそう」と感想を話した。
イナトリ・アート・フェスのディレクターを務める癸生川栄(きぶかわえい)さんは「今回のフィールドワークで、雑多さが稲取の面白さだと改めて感じた」と振り返り、「アート・フェス開催期間中に道づくりを進める計画を立てているので、ぜひ気軽に参加してもらえれば」と呼びかける。
荒武さんは「皆さんからまちづくりのヒントを多く頂いた一日になった。それらを元に事業を前に進めていきたい」と意欲を見せる。
路考茶での新しい道作りは今後、12月~2025年2月のDIYワークショップなどを経て、完成を目指すという。