
南伊豆町の農林水産物直売所「湯の花」(南伊豆町下賀茂)が10月8日、20周年記念講演会を湯の花観光交流館(南伊豆町下賀茂)で開いた。会場には約50人の出荷者や関係者が集まり、ワークショップでは同直売所の魅力や今後の展望について意見を交わした。
研究内容を解説する静岡大学農学部園芸イノベーション学研究室の中込光穂さん(関連画像6枚)
講師を務めたのは、静岡大学農学部園芸イノベーション学研究室の中込光穂さん(博士課程1年)と松本和浩教授。2人は、同直売所がコロナ禍でも営業を継続し、2021年度にはコロナ禍以前を上回る売り上げを記録した点に着目し、「湯の花がコロナ禍を乗り越えた理由」をテーマに研究を行った。研究成果をまとめた論文は学術誌「日本地域政策研究」第34号に掲載されている。
講演では、同直売所ががコロナ禍の困難な時期をどのように乗り越えてきたのかを、ポイントカード利用者(地元客)と一般客(観光客など)に分けて販売実績や販売単価を比較・検証したほか、生産者や来店客へのアンケート結果を基に分析した内容を紹介。中込さんは「湯の花の強みは、地域住民と出荷者、運営スタッフの信頼関係を基盤に、単なる販売拠点ではなく『地域の交流の場』として機能してきたこと」と述べ、同直売所が町のソーシャルキャピタル(社会関係資本)として重要な役割を果たしていることを説明した。
講演後半のワークショップでは、「湯の花の財産」「10年後の姿」「どんな行動が必要か」をテーマに意見交換を行った。地域の高齢化や農業の担い手不足、若い世代への継承などが課題として挙げられた。
出荷者の「おく農園」の吉田謹治さんは「ここにいる人は全員、湯の花を何とか維持したいと思っているのが財産。10年後は、規模は小さくてもいいから、伊豆半島の中でも『良い農産物を販売している直売所』といわれる存在になっていたい」と話す。湯の花では静岡県賀茂農林事務所から技術指導を定期的に受けており、研修農場を拠点に担い手育成にも取り組んでいる。「そのためには生産者のレベルを上げる指導員が欲しい」とも。