
日本の原風景と共に富士山や駿河湾を望むことができる「石部棚田」のかやぶき小屋修復に向けたかや束作りのワークショップが3月15日・16日、旧三浦小学校(松崎町石部)で開かれた。
江戸時代からの米作りの歴史を持つ石部棚田は、東日本では珍しい石積みによる棚田と、駿河湾・富士山・南アルプスを望むことができるロケーションが特徴。農林水産省が選定した「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~(ポスト棚田百選)」の一つになっている。
棚田の中にはかやぶき屋根を備える建物がいくつかあるが、経費や労力の確保が難しくなり劣化が進んでいた。それを見かねた移住者が発起人となり、昨年春、棚田の中心にある水車小屋の屋根を修復した。
続く水車小屋の少し下にある作業小屋の屋根の修復では、伝統技術を学びながら経験を積める場を作ろうと、石部棚田振興協議会が窓口となり、水車小屋の修復にも尽力した南伊豆町のかやぶき職人の吉沢裕紀さんを講師とした長期ワークショップを開催。1月は伊豆市で屋根の下地となる竹の伐採、2月は御殿場市でかや刈りを行った。
今回のワークショップには、地元住民や棚田のオーナーなど県内外から約30人が参加。吉沢さんから手ほどきを受けながらかや束作りに取り組んだ。昼休みには地元住民が中心になって餅をつき、つき立てのよもぎ餅やきな粉餅を食べながら交流を深めた。
吉沢さんは「今回の小屋は前回の水車小屋よりも小さいので、修繕方法を変えて茅束を作る方法にした。たくさんの人が参加してくれたので作業がはかどった。楽しみながら作業してもらえたようでうれしい」と話す。
同協議会の土屋和大さんは「次は秋口にワークショップを開く予定。足場組み立て、かや下ろし、下地解体、竹下地組み立て、かやぶき、棟上げなど、まだまだたくさんの工程があるが、年内の完成を目指して作業を進めていきたい。いろいろな方に自然素材のかやぶき屋根小屋の修復を体験してもらいたい」と呼びかける。