
現役時代は「野獣」の愛称で親しまれた元柔道選手の松本薫さんが1月26日、松崎町環境改善センター(松崎町宮内)で「頂(いただき)の先へ」と題した講演を行った。
松本さんは石川県金沢市出身で、5人兄弟の4番目。親の勧めで兄姉に続いて5歳で柔道を始め、オリンピックロンドン大会で金メダル、リオデジャネイロ大会で銅メダルを獲得した。世界選手権、ワールドマスターズ、グランドスラム全大会でも優勝経験があり、オリンピックを含めた世界大会を完全制覇した最初の選手。現役引退後は、ギルトフリー(罪悪感のない)なアイスを開発・販売する「ダシーズギルトフリーアイスクリームラボ」に役員として携わっている。
「それほど柔道が好きではなかった」という松本さん。中学時代に日本一になったが、高校時代にはなぜ勝たなければいけないのか目標を見失い、柔道をやめようとも考えたという。だが、いざやめようとしたときに後悔だけが残り、「これまで柔道に費やした時間を無駄にしたくない。柔道できちんと結果を残そう」と決意。今度は自分で「日本一」の目標を立て、柔道に真剣に向き合うようになった経験から、目標を自分で見つけることの大切さを伝えた。
さらに、柔道に取り組むに当たり3つのことを意識したと話した。1つ目は「好きでなくてもいい」。目標を持って努力することで見えてくるものがあり、価値ある経験が得られると信じたという。2つ目は「自分だけの戦い方」。筋肉がつきづらい体質で40回以上も骨折するなど、けがの多かった松本さんは洞察力を磨き、相手の動きを予測して戦うようになり、世界一に上り詰めた。3つ目は「何のために戦うのか」。現役時代のモチベーションは両親を世界に連れていくことだったといい、「自分のためだけに戦うのは限界がある。両親のためと思うことで柱ができた」と語った。
最後に「柔道でつかんだものは感謝」と話した松本さん。「柔道は自分を違う人間にしてくれた。みんながいたから戦えた。柔道をやって本当に良かった」と講演を締めくくった。
講演中には持参したオリンピックメダルを客席に回して触らせたり、講演後には護身術をレクチャーしたりするなど、終始気さくに笑顔で接した松本さん。参加者の質問にも丁寧に答えていた。
参加者からは「思ったより小さくてかわいかった。人柄の良さが伝わってきた」などの感想が聞かれた。