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下田の伊豆石採石場跡地を3D化 伊豆石文化探究会が調査の一環で

伊豆石文化探究会が公開した3Dモデル

伊豆石文化探究会が公開した3Dモデル

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 「伊豆石文化探究会」が現在、約1年半にわたる調査結果を取りまとめた報告書を県内図書館などに配布している。同調査では、ドローンを用いて下田市大沢地区の山中にある採石場の3Dモデル化も行った。

下田市大沢地区の石切場でのドローン撮影の様子(関連画像9枚)

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 伊豆半島ではかつて「伊豆石」と呼ばれる良質な石材が豊富に産出され、古くは江戸城の石垣、明治~大正時代には横浜外国人居留地や省庁の庁舎など、首都圏のさまざまな建築物にも使われてきた。

 そうした伊豆石文化を見つめ直し、伊豆石の文化的・歴史的価値を後世に伝えていくために2019年から活動している同会。「日本の歴史や産業に大きな影響を与えた伊豆石の価値が正しく理解されていないことに危機感を覚えた」と話す会長の剣持佳季さん。「下田を代表する伊豆石建築物だった『南豆製氷所』は、下田市で初めて国の登録有形文化財にも指定されながら、2014(平成26)年に老朽化のため解体されてしまったのがショッキングなニュースだった」と振り返る。

 今回の調査は「大成建設自然・歴史環境基金」の助成を受け、2022年10月から2024年1月にかけて実施したもので、伊豆石に関する史料整理、伊豆石を産出していた石切場の現地調査、個人が所有する石切場跡地のドローン撮影及び3Dモデル化などに取り組んだ。「伊豆には多くの石切場跡地があるが、その多くが民有地であることや安全性の観点から、これまで本格的な調査がなかなか行われてこなかった」と剣持さん。

 調査の結果、下田市大沢地区と大賀茂地区に大規模な石切場群が存在したことを突き止め、年間数万個の伊豆石が横浜や東京に流通していたことを明らかにした。さらにペリーロードなどに残る伊豆石建築物と浮世絵に描かれた横浜や銀座の建物との共通点から、首都圏の近代建築物に下田産の伊豆石が使われていたと推察できると結論づけた。

 さらに同調査では、下田市大沢地区の石切場跡地をドローンで撮影して3Dモデル化を行った。「橋やトンネルを点検する業者に撮影を依頼した。暗い石切場の中も、3Dモデルにすれば見やすくなるのではないかと考えた」と話す剣持さん。「肉眼では見えづらい手彫りの跡までしっかりと捉えることができて、予想以上の成果となった」と自信を見せる。その3Dモデルは「石切場遺跡と伊豆石産業史」と題した動画にまとめ、伊豆石に関する解説とともに同会ホームページで一般公開している。

 「下田の石切場群の存在を特定できたことが最大の成果」と話す剣持さん。「調査で明らかになった伊豆石の文化的価値について広く発信していくと共に、開港170周年で盛り上がる下田でその価値を活用してもらえるよう働きかけていく」と意欲を見せる。

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