ライフワークとして下田の漁師や海女の姿を撮り続けているフォトグラファー津留崎徹花さんが10月7日~9日、「海と、人と」と題した写真展を下田東急ホテル(下田市五丁目)で開いた。
日本大学芸術学部を卒業後、出版社勤務を経て2014(平成26)年にフリーランスとなった津留崎さんは、特に料理の写真を得意とするフォトグラファーとして活躍している。2017(平成29)年に家族で下田に移住し、ウェブマガジン「colocal」に家族でつづる移住体験コラムは140本以上の連載が続いている。
今回の写真展は、3月に東京での個展を彩った作品を改めて下田東急ホテルに集めたもの。下田・須崎でのヒジキ漁やテングサ漁にいそしむ海人(あま)たちの姿を捉えた写真を多く展示した。「東京で展示した作品を地元の人たち、特に被写体となった人たちに見てほしかった」と津留崎さん。「『私が写っている』とゲラゲラ笑っていた海女さんもいれば、『下田の原風景を残してくれてうれしい』と言ってくれる地元の人もいた」とほほ笑む。
家族で鑑賞に訪れていた下田在住の写真愛好家・宝田麻理子さんは「インスタグラムや雑誌で見ている津留崎さんの写真とは全然違う。海辺の現実を捉えた写真に圧倒される」と、真剣な表情で作品を見つめていた。
津留崎さんが下田の海人たちの写真を撮るきっかけになったのは、2019年に雑誌「クロワッサン」の海藻特集に携わったこと。「食への関心が強いからか、もともと生産者に対するあこがれのような気持ちを抱いていた。『下田に海女さんが、こんなにいるのか』と驚き、夢中でシャッターを切った」と振り返る。
その後もライフワークとして下田の海や漁の写真を撮り続けた津留崎さんは「知らなかった世界がどんどん明らかになっていくのが純粋に楽しかった」と話す。「防水カメラを使っていたが、1台は手入れを怠って潮が固まって動かなくなってしまった」と撮影環境の過酷さを物語るエピソードも。
3月には東京・代々木上原でこれまで撮りためた作品を集めた写真展を開いた。「写真と食材のコラボ」を目指した同展では、津留崎さんが家族で育てた米や、下田の魚や海藻などを使った料理も提供した。
今後について、「普段なかなかフォーカスの当たらない生産者たちを応援する意味でも、東京でやったような『食べる写真展』には可能性を感じている」と話す津留崎さん。「海藻の磯焼けがひどく、漁そのものができないという話を聞いている。私の写真が貴重な記録になってしまわないようにしなければと思っているが、地球規模のことに対して何ができるか、まだ答えは出ていない」とも。