西伊豆町が9月25日、「ALL COMPOST NISHIIZU プロジェクト」と題して、地域内での生ごみ堆肥化実証実験を本格的に始めた。一般家庭や飲食店から出る魚のアラや生ごみを地域内で堆肥化することを通じて、同町の水産物をはじめとした有機物の地域内循環を目指す。
漁業の町として栄えてきた同町では、一般家庭や事業者から出る廃棄物の中でも、魚のアラをはじめとする漁業関係の廃棄物が多く出る傾向にある。事業系の生ごみは各事業者が産業廃棄物として処理してきたが、処理費がかかるうえ、地域の焼却処理場の老朽化や故障等による焼却量制限が課題となっていた。さらに同町のリサイクル率は2021年度時点で15.1%と、全国平均の19.9%と比較しても低い状況にあった。
同プロジェクトでは、鹿児島県大崎町と大崎町SDGs推進協議会、フィッシャーマン・ジャパン(宮城県石巻市)によるサポートの下、過去14回「リサイクル率日本一」を達成した鹿児島県大崎町の「大崎リサイクルシステム」のノウハウ提供を受けながら実施する。これまで以上に再資源化の徹底を図るとともに、町民のごみ減量化の意識を高めることを目指し、堆肥化実証実験に取り組む。
2022年6月には、星野淨晋町長はじめ西伊豆町の関係者らが大崎町を訪問。埋立処分場やリサイクル堆肥を作る大崎有機工場などを視察した。その後、消費者問題やSDGsなどの地球環境について啓発活動を行う「西伊豆町消費生活研究会」と「町女性会」に所属する町民約20人も大崎町を訪れ、先進地のノウハウを学んできた。
西伊豆町消費生活研究会は9月4日、実証実験を本格的に実施するに当たり「生ごみ捨て方講座」を開催。大崎町SDGs推進協議会によるレクチャーを受けながら、生ごみの細かい分別方法や注意点などを学んだ。受講した会員からは「改めて『やるぞ』という気持ちになった」「これまでは段ボールコンポストを用いて個人で堆肥作りをしていたが、町全体で取り組んでもらえると、とてもやりやすい」など前向きな声が多く聞かれた。
9月25日には、同町宇久須地区に建てられた実証実験用の堆肥舎での生ごみ収集を開始。堆肥舎の建設に当たっては大崎町SDGs推進協議会も西伊豆町を訪問し、建設候補地の現地確認や西伊豆町消費生活研究会へのヒアリングなどを実施。臭気が住民に影響を与えない場所であることやアクセスが容易にできることなど条件に合う場所を選定した。
約1トンの生ごみを収集して2024年2月までに堆肥化し、その後、堆肥の成分分析や試験利用などを予定している。