幕末・開国に貢献したヒロインとして知られる「お吉(斎藤きち)」をしのぶ「お吉祭り」が3月27日、下田市内で開催された。当日、通常は保存管理のため立ち入りが制限されているお吉ゆかりの文化財「安直楼(あんちょくろう)」(下田市三丁目)が一日限りで特別公開され、建物内では下田芸者衆による華やかな演舞が披露された。
安直楼は、お吉が1882(明治15)年から自立を夢見て営んだ小料理屋。建物内にはお吉の身の回りの品や、当時客をもてなした座敷が大切に保存されている。「下田まち遺産」第4号にも登録されているが、木造建築の保護という観点から普段は内部を公開していない。
年に一度、お吉の命日に合わせて行われた今回の特別公開は、お吉が実際に過ごした空間を体感できる貴重な機会となった。訪れた人々は、明治の意匠が色濃く残る座敷や調度品を興味深く見学し、往時の雰囲気に思いをはせた。
特別公開された座敷では、下田芸者衆による演舞も行われた。三味線の音色に合わせて伝統的な踊りが披露されると、歴史ある空間は一気に華やいだ空気に包まれ、来場者はその優雅な所作に見入っていた。同祭ではこのほか、お吉の菩提寺である宝福寺での法要なども営まれ、多くの参拝客がその生涯をしのんだ。
下田芸者を取りまとめる桝家奈美さんは、「お吉まつり」を地域に根差した行事として守り続けたいとし、「和の文化を受け継ぐのが難しい時代だが、下田は芸者が似合う街。下田の豊かな歴史や文化を皆さまと共に次世代へつないでいきたい」と話す。
下田芸者は今後、5月の「黒船祭」や6月の「あじさい祭り」でも、普段は座敷でしか見ることのできない「下田節」など、下田独自の演舞を披露する予定。桝家さんは「下田ならではの踊りに触れられる機会なので、ぜひ多くの方に足を運んでほしい」と呼びかける。