
農林水産省の「つなぐ棚田遺産」にも選ばれている「石部棚田(いしぶたなだ)」(松崎町石部)で6月21日、棚田を約1500本のろうそくでともすイベント「石部の灯(あか)り」が開かれた。
石部棚田がある同地区は、かつて海上交通の目印として火をともしていた歴史があり、火に縁のある地域として知られる。そうした背景にちなんで始まったのが同イベント。棚田の保全活動の一環として、より多くの人に棚田や松崎町に関心を持ってもらおうと、2012(平成24)年に始まった。コロナ禍で3年間の中止はあったが、2023年に復活。今回で11回目を迎えた。主催は石部棚田振興協議会。
石部棚田では、棚田で収穫した米の進呈や農作業への参加ができる「オーナー会員」を毎年募集している。これまで同イベントは5月の田植え後に開いていたが、今回はオーナー会員に、より楽しんでもらえるよう、草取り作業と併せて6月中旬の開催とした。さらに、例年はカメラマンの三脚で混み合う交流棟付近に特別席を設け、オーナー会員にはベストポジションからの景色をゆったり楽しめるよう工夫した。
当日は16時から棚田のあぜに約1500本のろうそくを設置。18時からボランティアたちが順に火をともしていくと、夕暮れとともに幻想的な風景が浮かび上がった。
会場には、松崎町を拠点とする移動販売のピザ・カレー店「ボナペティ」と多国籍料理店「マサラッポ」がキッチンカーを出店。ともしびが浮かび上がる中、屋台グルメを楽しむ人たちの姿も見られた。
担当した松崎町企画観光課の齋藤一憲さんは「石部棚田は担い手不足が長年の課題だが、最近は棚田をきっかけに松崎町へ移住した人や、二地域居住をしている人が保存活動に熱心に取り組んでいる。このイベントをきっかけに石部棚田のファンになってもらい、オーナー会員として保全活動にも参加してもらえたら」と期待を込める。