植物の葉を食べる幼虫のふんを原料にしたお茶を製造・販売する「虫秘茶(ちゅうひちゃ)」(京都市伏見区)が11月25日、静岡県・松崎町産の桜葉を食べたガの幼虫のふんを使ったスピリッツ「LEPI TRAIL(レピ・トレイル)」を発売した。
「LEPI TRAIL」を開発した丸岡毅さん(写真提供=虫秘茶)(関連画像2枚)
同社社長の丸岡毅さんは京都大学大学院で農学を専攻し、「ガの幼虫のふん」の香りや味わいに着目して研究に取り組んできた。そのままでは苦くて食べられないような葉も、幼虫の腸の中で消化されていく過程で、驚くほど香り高く味わい深くなるという。「研究の世界でも昆虫のふんは未開拓の分野。それを食品として捉えた研究や文献はまだほとんどない」と丸岡さんは話す。
2023年には、ガの幼虫のふんを原料にしたお茶「虫秘茶」の製品化に向けてクラウドファンディングで協力を呼びかけ、目標の3倍以上の支援を集めたほか、大阪・関西万博では「地球の未来と生物多様性」をテーマにしたプログラムに登壇するなど注目を集めている。
今回の新商品は、松崎町が全国シェア約7割を誇る桜葉(塩漬け用オオシマザクラの葉)を食べたガ(オオシモフリスズメ、オオミズアオ、ウスタビガ)の幼虫のふんを使って作ったもの。水とアルコール、ふんのみを原料とし、「オオミズアオ」のふんをスピリッツに浸した後に蒸留し、アルコールの調整水には「オオシモフリスズメ」と「ウスタビガ」のふんを煮出した「虫秘茶」を使用。3種のふんの香りを異なる方法で引き出して合わせることで、「サクラの風味を限りなくピュアに引き出した」という。
商品名の「LEPI TRAIL」は、ガやチョウの仲間を指す英語「Lepidoptera」に由来し、「虫の歩いた跡」を意味する。
丸岡さんは「植物の持つ香りが虫の体を通ることで凝縮され、元の植物からは想像もつかない香りになるのが虫秘茶の魅力。フルーティーな桜の香りを楽しみながら、生き物たちの営みに思いをはせてもらえたら」と話し、「国内外の名門レストランとの取引を通じて、昆虫のフンを嗜好品として確立する世界初の試みを進めてきた。松崎町の桜葉を新たな形で表現し、世界へ発信する一歩目としたい」と意欲を見せる。
アルコール度数は42%。価格は4,400円(110ミリリットル)。同社オンラインショップで販売する。