旧稲生沢中学校の校舎を活用した下田市役所の新庁舎が完成し、4月21日、記念式典が開かれた。式典には市議会議員や地元区長など約30人が出席した。
下田市は2010(平成22)年、施設の老朽化に加え、津波被害の懸念もある下田市役所の建て替えを決めた。議論を重ね、さまざまな問題に直面しながらも、コスト縮減や環境負荷の低減を考え、旧稲生沢中学校施設を新庁舎として活用することを決定した。
「世代を超えて継承する未来の拠点」をコンセプトに、新庁舎はできるだけ元の校舎の面影を残しつつ、市役所として、さらには市民の交流の場としても利用できる場所を目指した。1階には多目的室やこども健康教室などが、2階・3階には市役所の各課が、4階には議場などが入る。さらに自家発電装置や大型受水槽を設置し、防災拠点としても機能する。
記念式典で松木正一郎下田市長は「地域にあった学校、地域の歴史に敬意を表し、活用することで未来へとつないでいきたい。この庁舎がまた新しい歴史を作っていくことを期待する」と話した。旧稲生沢中学校の最後の卒業生で下田高校3年の村山拓夢さんと松本梨那さんは「この庁舎が、新たな未来を切り開く舞台となることを信じている」と話した。
式典後には記念植樹も行い、市長らが「シドモアの桜」と呼ばれる桜の苗木2本を植えた。明治時代に日本から米ワシントンに贈られ、現在ポトマック河畔の桜並木として有名になった桜にルーツを持つ木で、下田開港170周年の記念と合わせて植樹することになった。
午後には一般向けの内覧会も行い、多くの市民らが新庁舎を訪れた。同中卒業生という女性は「新しくきれいになっているが、変わっていないところも多い。思い出の学校が、このような形で残されるのはうれしい」とほほ笑む。
4月30日には正副市長室や議場、企画課、観光交流課などが新庁舎に移転した。今後さらに新築棟の整備を進め、2026年春の全面移転を予定している。