20世紀を代表する漫画家・手塚治虫の作品「火の鳥」が、下田在住の絵本作家・鈴木まもるさんの手によって初めて絵本化された。
「火の鳥」は、遠い過去やはるか未来を舞台に「生や死」「人間の業(ごう)」などを壮大なスケールで描いた物語。1945(昭和29)年の連載開始から、1986(昭和61)年の連載終了(未完)まで数多くの物語が生み出され、手塚治虫のライフワーク的作品となっている。今年、同作品は連載開始から70周年を迎える。
絵本制作を手がけた鈴木まもるさんは、絵本作家であると同時に、鳥の巣の研究家としても活躍中。一昨年、鈴木さんはラジオ番組に出演し、手塚治虫のファンだということ、生命をテーマとする作品を描いていること、鳥の巣の研究をしていることなどを話した。昨年放送された再放送を偶然聴いた手塚プロダクションの担当者が鈴木さんに連絡。火の鳥連載70周年の記念として、何か一緒にできないかと持ちかけた。
話し合いを重ねるうちに、「火の鳥」はこれまでに幾度もアニメ化、舞台化され、数多くのファンを持つ一方で、小さな子には少し難しく、最近の若い人にもあまりなじみがない、との思いから、小さな子どもにも分かるように絵本にすることが決まった。
手塚プロダクションからのオファーについて、鈴木さんは「思ってもみなかったことで、最初は恐れ多いと思っていた。ラフ画として火の鳥が巣にいる姿を描いてみたら、動物が周りにいるイメージが湧き上がってきた」と話す。「原作と違い人間ドラマを描かないことで、シンプルに手塚先生の『生きる』というメッセージが子どもたちにも伝わるのでは」とも。
「この絵本をきっかけに、より幅広い世代の人たちに手塚治虫の『火の鳥』を読んでもらえたら」と鈴木さん。「今は災害や戦争で大変な時代。不安な心を和らげるものを、自分の力で探していくための足がかりにしてほしい」と話す。
仕様は32ページで、価格は1,540円。4月26日発売。