多くの人に惜しまれながら2014(平成26)年に解体された下田のランドマーク「南豆製氷所」の建造100年の節目に合わせ、企画展「『南豆製氷を未来へ!』保存運動が残したもの」が11月3日、旧澤村邸(下田市三丁目)で始まった。主催は保存運動に取り組んだ市民団体「南豆製氷応援団」。
南豆製氷所は、1923(大正12)年に伊豆半島発の近代製氷工場として建造された伊豆半島最大規模の伊豆石建築で、大正ロマンを残す下田のランドマークとして親しまれてきた。建物を後世に残すため保存活動も活発に行われたが、建物の老朽化が進み倒壊の危険性が高まったことなどから2014(平成26)年、建物は解体された。
写真展を企画した南豆製氷応援団の英(はなぶさ)みどりさんは「本当にたくさんの人が関わった保存活動だったが、紆余(うよ)曲折あって建物を後世に残すことはかなわなかった。町の歴史を失うと多くの人が絶望を味わい、人の輪も失われる。私たちの経験から、歴史的な建物を守る大切さを伝えたいと展示会を企画した」と話す。
同展では解体前の南豆製氷所の姿を伝える写真のほか、保存活動の一環で行われた音楽ライブや作品展示会などのイベントの様子など、100点以上を展示している。
英さんは「保存活動は残念な結果に終わったが、それが契機となって『下田まち遺産』が始まった。歴史的建築物や風物など150件以上が登録され、市の景観まちづくり条例にもまち遺産の観点が盛り込まれている。人々の情熱が大きく物事を動かす力になることも伝えたい」と力を込める。
開催時間は10時~16時。水曜休館。入場無料。今月12日まで。