浅海漁業の振興発展のための調査研究に取り組む「静岡県水産・海洋技術研究所 伊豆分場」(下田市白浜)が5月9日、筑波大学下田臨海実験センターの稲葉一男教授と共同で、キンメダイ精子の冷蔵保存技術を開発したことを発表した。
キンメダイは伊豆の名物として知られ、水揚げ量日本一を誇る下田港では「下田のキンメダイ」を、東伊豆町では「稲取キンメ」を、それぞれブランド展開するなど、地域産業にとって最も重要な海産資源の一つとなっている。しかしながらその漁獲量が減少傾向にあることから、同分場では人工授精で誕生した稚魚を海に放す栽培漁業の実現を目指し、キンメダイの種苗生産研究に取り組んでいる。
キンメダイは雌雄で成熟期がずれるため、捕獲したその場での人工授精が難しい。その問題を解決するため、各種イオンの濃度やpH、添加物を変えながら、どのような保存液がキンメダイ精子の冷蔵保存に適しているかの実験を重ねた。
今回開発した保存液を使った精子は冷蔵保存開始後81日後まで運動能力があり、さらに保存液で冷蔵保存した精子で受精させた卵がふ化まで至ることも確認できたという。
同分場の長谷川雅俊さんによると、同様の技術開発は「世界初」だという。この保存液を利用することで、今後の種苗生産試験が効率的に進められることが期待されている。
研究成果の詳細は、日本水産学会誌とオンラインで公開されている。