東伊豆町が現在、伊豆稲取駅周辺で「グリーンスローモビリティー(通称=グリスロ)」を活用した「稲取きんめ号」運行の実証実験を行っている。観光客の周遊支援に加え、地域住民と来訪者が混ざり合う新たな移動体験の創出を目指す。
モビリティーによる地域活性化を手がける「うさぎ企画」(長泉町)が、同社が焼津市で3年間にわたって展開した「ツナモビ」の事例を元に企画したもの。時速20キロ未満で公道を走る電動車によるサービスで、排気ガスを出さない環境性能と開放的なデザインが特徴。
車両は稲取の象徴であるキンメダイをイメージした鮮やかな赤色で、最大5人が乗車可能。コンパクトな車体は、自家用車では入りにくい稲取特有の細い路地もスムーズに通り抜ける。1月17日の運行開始以来、1日におよそ10人が利用するという想定通りの水準だったが、2月14日~3月8日の「素盞鳴(すさのお)神社雛(ひな)飾り」開始以後は1日平均15人以上が利用しているという。
運行ルートは、伊豆稲取駅を起点に、素盞鳴(すさのお)神社や文化公園、旅館「銀水荘」など13カ所の停留所を巡る。同町が実施する「現地決済型ふるさと納税」との相乗効果を狙っているのも特徴で、伊豆稲取駅内の「まちのレセプション ようよう」で寄付すると、その場で発行される「感謝券(お買い物券)」は、停留所名にもなっている「徳造丸本店」などの加盟店でそのまま利用できる。
「この乗り物の最大の魅力は、ゆっくり走ることで生まれる『余白』にある」と話すのは、うさぎ企画の増井拓良さん。「窓越しに街の匂いや空気を感じられ、偶然乗り合わせた地元の人と観光客の間に自然な会話が生まれる。そんな街に溶け込む体験を提供したい」とも。
利用者からは「路地を抜ける景色が新鮮だった」「車内で教わったランチの店で、そのまま感謝券が使えて便利だった」などの声が聞かれた。増井さんは「実験に終わることなく、赤い車両が稲取の日常の風景として走り続ける状態を目指したい」と意欲を見せる。
運行は10時30分発の始発から15時30分発の最終便まで1日5便(1周約45分)。料金は、1回=250円、1日乗り放題=500円。最大5人の定員内で空席を譲り合うスタイルのため、空き状況の確認や決済がスムーズな東伊豆町公式LINEでの事前予約を推奨している。現金購入は「ようよう」「こらっしぇ」役場窓口でも可能だが、混雑時は乗車できない場合があるため、運営側は「事前にLINEで最新状況を確認の上、余裕を持って利用してほしい」と呼びかけている。
実証実験は3月8日まで。